【獣医師監修】猫の肥満は危険!?知っておきたいリスクとダイエット方法

2021/09/10 更新日:2022/11/04

猫 肥満 ダイエット

ぽっちゃり猫はただそこに寝ているだけでも可愛くてたまらない。そんな猫達にゴロゴロと喉を鳴らしておねだりされたら無視するわけにはいかないですよね。

このぽっちゃり好きは、生まれたばかりの赤ちゃんを可愛く感じることと同じように、人間の本能に刷り込まれているようです。しかし飼い主さんが「ちょっとぽっちゃりで可愛い」と思っている愛猫が、実は肥満だったということがあるかもしれません。

北米で2005年に組織されたペット肥満予防協会(The Association for Pet Obesity Prevention (APOP) )によると、猫のうち60%が過体重または肥満であると言われています。

そして、肥満の状態になってしまっている猫をそのままにしてしまうと、深刻な健康問題につながる可能性があるのです。例えば、関節の疾患、心臓や呼吸器の疾患、尿石症、糖尿病などなど…肥満との関連が示唆されている疾患はとても多く存在します。

可愛いぽっちゃりもいいけれど、大切な家族の健康的な長生きを目指してみませんか?

この記事で伝えたいこと

猫の肥満は、命や健康を脅かすほどの病気を多く引き起こす深刻な危険因子

肥満とされる数値は、適正体重の10~20%増で過体重、20%以上で肥満とされている

猫のダイエットは食事がもっとも有効。ただし、長期戦の覚悟が必要

うちの猫は肥満なの?

肥満猫

人と同じように、それぞれの猫の体格や年齢によって適性体重は異なるので「〇kg以上は肥満」ということは一概には言えません。

一般的な猫の適正体重は、成長が止まる満1歳あたりの体重が基準になります。1歳のころ、うちの子の体重が何kgだったか思い出してみましょう。成猫時6㎏以上になるノルウェージャン・フォレスト・キャット、メイン・クーン、ラグドール、サイベリアンなどの大型猫の場合は成長曲線を加味して2歳程度の体重が基準となる場合もあります。

肥満とされる数値は、適正体重の10~20%増で過体重、20%以上で肥満とされています。この数値に当てはまってしまうと、健康に悪い影響やトラブルが発生し始めると言われており、ダイエットを考えねばなりません。

では、過体重・肥満状態の体重とは具体的にどのくらいでしょうか?

標準的なサイズの猫の体重はおよそ3~5㎏ですから、標準体重が3kgの子は約3.3kg以上で過体重・3.6kg以上で肥満体重、5kgの子は約5.5kg以上で過体重・6kg以上で肥満状態、ということになります。つまり、適正体重の猫とそうではない猫の体重差は、数百gということになります。

少し意外な感じがしませんか?

人間の場合、「太り過ぎた!」「ダイエットしなくては!」というときは「kg単位」の増減をイメージするものです。ですので、愛猫が500gくらい標準体重をオーバーしていても「可愛いぽっちゃり」と思ってしまうかもしれません。しかし、この500gを逆に体重50kgの人間に換算すると7.5㎏相当、ということになります。このように、猫の体重の数百グラムは、飼い主にとって僅かな差に思えても、当の猫達にとっては重大な変化となるのです。

また、体重のほかに、ボディコンディションスコア(BCS)といって、猫の「見た目」と「触れた時の感触」で適性体重かどうかを判断する目安もあります。

ボディーコンディションスコア 猫

出典:「飼い主のためのペットフード・ガイドライン ~犬・猫の健康を守るために~」(環境省) (https://www.env.go.jp/nature/dobutsu/aigo/2_data/pamph/petfood_guide_1808.html)

BCS4やBCS5の状態になると、肥満のサインです。

うちの子が肥満なのか適性体重なのか、分からない場合はかかりつけの獣医さんの判断を仰ぎましょう。

猫の肥満の原因と肥満が健康に及ぼす影響

猫の肥満の原因

単純なことですが、消費カロリーよりも摂取カロリーが多いとエネルギー過多になり、だんだんと太ってきてしまいます。

もともと猫の先祖が獲物を得る方法はエネルギー消費を極力抑えた待ち伏せ型と考えられています。ペットとして人と暮らしている今もエネルギーの無駄遣いを避ける生活スタイルは変わっていません。省エネモードで生活している猫達に快適な環境で十分な食事を与えれば、かなりの確率で太りぎみになってしまう可能性があるのです。

多くのキャットフードは現代の猫のライフスタイルに合わせた栄養バランスになっていますが、僅かな「与えすぎ」が積み重なると着実に太ってしまいます。

置き餌をしてどのくらいの量を食べているか把握できない、家族がそれぞれにオヤツをあげている、などの飼育スタイルも肥満の原因となります。

また、避妊・去勢手術をした猫は、その分エネルギーの消費量が減りますので、太りやすくなる傾向があります。シニア期を迎えた猫も1日に必要とするエネルギーが若いころより低下するため若いころと同じフード・同じ量だと体重増加が進む可能性があります。

このように肥満の原因の多くは摂取エネルギーの過剰が占めています。しかし中には、症例数は少ないものの、内分泌系の病気が原因で太ることもあります。また、猫のお腹がでてきたので、肥満だと思っていたが、実は病気によって腹水が溜まっていた、内臓が腫大していた、などといった場合もあります。急に太ってきた場合などは、かかりつけの獣医師にこのような疾患が起因していないか確認することも重要です。

猫の肥満は、人と同じように糖尿病や呼吸器不全、関節炎など、さまざまな病気につながります。また、肥満が直接的に病気の起因とならない場合でも、さまざまな病気を悪化させたり、かかりやすくなったりするリスクが高まります。例えば、肥満の猫は自身で「毛づくろい」をしにくくなることで「皮膚病」を発症するリスクが高まると言われています。

では、猫が健康で長生きするために私たちは何ができるのでしょうか?

猫の理想体重を知り、その体重をキープする

猫の理想体重

家での定期的な体重チェックは、一般家庭にあるような体重計で行なうことができます。まず、自分の体重を量ってから、猫を抱っこしてもう一度体重を量りましょう。その体重の差が、猫の体重ということになります。

ただ、前にも述べました通り、数百グラムの違いが猫にとっては大きな差になりますので、正確な体重を確認したい時は動物病院で測ってもらうと良いでしょう。

食事の量や栄養バランスに注意する

食事の量

猫の場合、食事によるダイエット法がもっとも有効だと言われています。

ほんの少しだけダイエットをしたい場合は、フードの種類は変えずに、食事量を減らすだけで問題ないかもしれません。

本格的にダイエットに取り組むなら、キャットフードを見直すことを検討してみましょう。栄養バランスとして脂質が控えめなフードを選べば、全体の摂取エネルギー(カロリー)を抑えることができます。また、タンパク質価が高く炭水化物の含有量が低いフードを選ぶと、摂取カロリーそのものはあまり変わらなくても、必要な筋肉を維持しながら炭水化物太りしにくい体作りを目指すことができます。

体重コントロール用やダイエット用のフードはたくさんの種類がありますが、あまりに低脂質・低タンパク質で高繊維のものは嗜好性が悪くなってしまう場合もありますので、猫の好みに合わせつつ長期的にダイエットに取り組めるようなキャットフードを選ぶことが重要です。

キャットフードの選び方に悩んでいる方は「キャットフードの正しい選び方とフードに関連した困りごとへの対処法」を参考にしてみてください。

また、フードの分量を「目標体重の量」にセットすることもポイントです。体重6㎏の猫を5㎏にダイエットしたい時は、現時点での体重の給与量目安ではなく、5㎏の体重に合わせた給与量を目安に調整してください。

せっかくフードを減量用に変えても、そのフードで6㎏の体重の子の目安量を与えていてはダイエットになりませんので注意が必要です。

なお、急な減量は健康に深刻な問題を与える恐れがありますので、食事を抜く(絶食させる)、ほとんど食べないダイエットフードを置きっぱなしにする、などのやり方は絶対にやめましょう。特に肥満傾向の猫の場合、急なエネルギー不足は肝リピドーシス(脂肪肝)を誘発する可能性があります。このような症状は場合によっては死に至る重篤な疾患になりますので、ダイエット期間ほど必要なフードをきちんと食べているかモニターしてあげてください。

肥満の猫には、おやつの代わりにスキンシップを!

肥満の猫 おやつ

ダイエットを考えるならば、おやつはなるべく与えないほうが賢明です。しかし、おやつが猫との暮らしに欠かせないものになっている場合もあると思います。

おやつをあげる場合はフード同様に低カロリーのおやつを選び、その分だけ食事の量を差し引いて与えましょう。

猫のダイエットの基本は食事管理ですが、もちろん運動で消費カロリーを増やしたり筋肉量を増やして基礎代謝をUPしたりすることもダイエットにつながります。しかし、猫を人間の思惑通りに運動させてダイエットに導くことはとても難しいと言われています。

猫に運動してもらう方法は、その猫が何に興味を示すかによります。

食べることが好きな子であれば、食事場所を変えて少しでも動いてもらう方法があります。普段は床に置いているフード皿を、キャットタワーの上など高い場所に移すと猫を登らせることで運動量を増やすことができます。

おもちゃが好きな子なら、猫じゃらしなどで積極的に遊ぶのも良いですし、ボール状のものを転がすと、中に入れたフードが少しずつ出てくる仕組みのおもちゃなどを活用するのもおすすめです。

少しでも運動してもらうために、猫が興味を示すねこじゃらし、キックトイ(抱き着いて蹴って遊ぶぬいぐるみ)などを探し、一日のルーティーンに遊びの時間を入れて、今までよりできるだけ長めに遊んであげましょう!

ダイエットは、猫にとっても飼い主にとっても我慢が必要な場面がありますが、おやつよりもっと良いのは、積極的にスキンシップをして遊んであげることです。健康かつ低カロリーの愛情表現になります!

猫の肥満についてまとめ

肥満が引き起こすリスクとダイエットの方法を説明しました。肥満は、猫の命や健康を脅かすほどの病気を多く引き起こす深刻な危険因子です。

繰り返しになりますが、猫はもともと無駄なカロリーを消費しないライフスタイルの生き物です。そのうえ、体が重くなれば、動くことが億劫になり、余計に太りやすい生活スタイルになってしまいます。犬の場合は、飼い主にくっついて運動するのが好きですし、ダイエットのためのプログラムも遊び感覚で付き合ってくれますが、猫は主従関係を持たず、人間とは対等の立場であるため、飼い主が意図する運動に従わせるのは難しいのです。

ですから、猫のダイエットは食事管理が中心になり、なかなか大変なプロジェクトとなります。また長期戦の覚悟が必要です。

しかし、しっかりと正しい管理で取り組めば、成果は必ず表れます。猫達が幸せに長生きできるよう、健康的な体重を維持できるかどうかは、飼い主さん、あなたにかかっているのです!

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この記事を書いた人

大久保 マネージャー

犬猫専門の動物園でアルバイトした事をきっかけにペット業界へ。以降、ペットショップ、ペット専門問屋、店舗開発などペットに関わる仕事を経験後、現在はNOW FRESHの営業として日々活動中。

監修獣医師

川本 紗弓 獣医師・ペット栄養管理士

日本大学 生物資源科学部 獣医学科卒業。東京都内の動物病院で臨床医として勤務した経験を経て、毎日の食事が犬猫の健康に大きな影響を与えることに気が付き、栄養学の道に進む。専門は犬猫だが、鳥も大好きで、家族のシニアインコを溺愛。