麻布大学 獣医学部 獣医学科卒業。東京都内の動物病院で臨床医として勤務。
その後、獣医師として栄養学をより深く学ぶことで、犬猫の健康を臨床医時代とは違う視点からもサポートできるのではと考え現在に至る。毎日欠かさず動物関係のSNSをみることで日々癒されている。
2024/05/16
それぞれの種類によって旬の時期が異なり、一年中楽しめるイカ。
調理方法も多様で刺身や煮物・パスタなど、和食でも洋食でも楽しみ方は様々です。
高タンパクで低脂肪であり、タウリンなどの栄養も豊富に含まれています。しかし、生のイカは犬の体内でビタミンB1欠乏症を引き起こす物質が含まれている危険な食べ物です。
本記事では、犬が生のイカを食べてしまった時に起こり得る中毒症状や、対処方法についてみていきます。
【 目 次 】
環境省が発表している「飼い主のためのペットフード・ガイドライン」に、「注意が必要なもの」の1つとしてイカが紹介されています。
イカにはチアミナーゼという酵素が豊富に含まれていますが、これは犬にとって欠かせないビタミンB1を分解してしまうため、ビタミンB1欠乏症を引き起こす可能性があります。ビタミンB1欠乏症は食欲不振や嘔吐、痙攣、筋力の低下やふらつきといった症状が現れます。
また、生のイカにはアニサキスが寄生していることがあります
アニサキスは、アジやイワシ、サケなどの魚介類だけでなく、イカにも寄生します。主に内臓に寄生していますが、宿主が死亡して時間が経つと内臓以外の部位へ移動するため、生のまま食べてしまうと人間と同じく食中毒を引き起こすリスクがあります。
ただし、チアミナーゼは加熱すると効力を失い、アニサキスは冷凍または加熱することで死滅するといわれています。犬にイカを与える際は茹でる・蒸す・焼くなどして火をしっかり通すようにしましょう。
加えて、アレルギーにも注意が必要です。アレルギーがある場合は加熱したとしてもアレルゲンになる可能性はなくなりません。
そもそも栄養面において総合栄養食の良質なドッグフードを食べている場合は、栄養面で不足することはありません。食欲が落ちていて、とにかく何か食べさせたい時や食べる楽しみ、与える楽しみとして、加熱の上、適量の範囲内で与えることが大切です。
総合栄養食については以下の記事に詳しくまとめているので参考にしてみてください。
生のイカを大量に食べてしまうと、ビタミンB1欠乏症になり、筋力の低下やふらつきが見られることがあります。
状態が悪化すると歩行障害や、けいれん発作などが起こり、最悪の場合命を落とすこともあります。
また、もしアニサキスが寄生していて中毒症状が出た場合、激しい腹痛や吐き気、嘔吐などを引き起こします。
上記のような症状が見られたら、すぐに動物病院を受診してください
どのくらいの量の生のイカを食べると危険なのかについては、犬の大きさや健康状態・年齢などによると考えられます。しかし、食べてしまった量が少なく、見る限り体調に影響がないからといっても、数日たって症状が現れたり、何も症状があらわれなくても体に不要な負担をかけている可能性は否定できません。
いつまでも元気でいてほしいと願うのであれば、どんな犬であっても生のイカを少しでも食べさせないようにするのが賢明です。
非常に身近な魚介類ですので、食事中はもちろん、台所に犬が入れるようにしている場合は調理中や保管時も、犬が誤って口にしないように、細心の注意を払うようにしましょう。家族やその場にいる人にも伝える必要があります。
万が一、犬が生のイカを食べてしまったらどうしたらいいのでしょうか。
その場合は食べた量にかかわらず、すぐにかかりつけの動物病院に連絡をしてください。その際、下記の情報もなるべく具体的に伝えるようにしましょう。
病院に行く際、もし食べたものと同じものが残っていれば一緒に持っていくのがおすすめです。
動物病院ではこれらの情報や症状をもとに、血液検査を行ったり、場合によっては吐かせたり胃の洗浄などを行います。また、既に中毒症状が出ている場合は投薬治療や輸血などを行うことも考えられます。なお、自己判断で応急処置をすることは危険ですので絶対にやめましょう。
アレルギーは、体内の免疫機能がタンパク質に対して異常に反応することで起こるものです。
加熱したイカであれば、犬に与えることはできますが、タンパク質が含まれているので、アレルギーを引き起こす可能性があります。アレルギーを起こすと下痢、嘔吐、痒みを伴う症状などが多く見られます。
初めて犬に加熱したイカを与えるときには、少量にしておき、ほかに新しい食べ物を与えないようにしましょう。こうすると、万が一アレルギーを起こしたときの重症化を抑え、その原因を特定しやすくなります。
Qイカの加工品であるスルメやあたりめは与えても大丈夫でしょうか?
A加工品の場合加熱処理してありますので、チアミナーゼの心配はありませんが、人間用の食品は味付けされ、塩分が多くなっていることがあります。また固いものだと喉に詰まらせたり、消化不良になったりする可能性もあるので与えないようにしましょう。犬用に販売されているものをおすすめします。
犬にとって生のイカは、ビタミンB1欠乏症を引き起こしかねないとても危険な食べ物です。
飼い主としてしっかり注意をし、誤って犬が口にしないようにしましょう。万が一、犬が生のイカを食べてしまったら食べた量にかかわらず、すぐにかかりつけの動物病院に連絡をして指示を仰ぎましょう。
イカ以外の魚介類については以下の記事にまとめていますので、合わせてご覧ください。
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