「ペットに携わる仕事がしたい」の一心で、2年前に異業界からグローバルペットニュートリション㈱に転職。子供の頃に家にいたセキセイインコとは、友達のように喜怒哀楽を共有して一緒に育った。 学生時代の4年間をアメリカのイリノイ州で過ごす。趣味はテニスで、身体を動かすことが好き。 将来は、人間の家族と犬と一緒に朝活ランニングすることが小さな夢。
2021/05/31 更新日:2022/12/12
皆さんは、犬が毎日食べるドッグフードをどのように選んでいますか?
価格や原材料、お店の人のおススメ、ネットの口コミなどから、なんとなく選んでいる飼い主さんもいるかと思います。たとえ、犬にピッタリのごはんを探したい!と思っても、近頃は多種多様なドッグフードが販売されているので、どう選べば良いのか迷ってしまったこともあるでしょう。
この記事では、ドッグフードを選ぶ際の大きなヒントとなる「ドッグフードの表示」について解説します。これからドッグフードを選ぶ方も、今与えているドッグフードについて詳しく知りたい方も、参考にしてみてくださいね。
ドッグフードをどのように選べばいいか迷っている方
ドッグフードに含まれる原材料や成分を正しく理解したい方
まず、日本におけるドッグフードのパッケージの表示には、あるルールがあります。
1つ目は『愛がん動物用飼料の安全性の確保に関する法律 (ペットフード安全法)』という法律によって定められた義務表示、2つ目は『公正競争規約』という、『ペットフード公正取引協議会』という団体により定められた自主規制ルールです。
ペットフード公正取引協議会は任意の団体です。日本で販売されているドッグフードは、ペットフード公正取引協議会に参加していないメーカーの物も多くありますが、このルールを守っています。
①ペットフードの名称
②原材料名
③賞味期限
④事業者の氏名または名称および住所
⑤原産国名
⑥成分
⑦ペットフードの目的 (総合栄養食、間食、療法食、その他の目的食の別)
⑧内容量
⑨給与方法
このように、ドッグフードには様々な情報を表示しなければならないというルールがありますが、犬にとって最も良いドッグフードを選ぶために特に着目したいのが『原材料』と『成分』です。
公正競争規約では、添加物以外の原材料を記載する順番は「原材料に占める重量の割合の多い順に記載すること」というルールが定められています。
なお、表示するスペースが小さすぎる場合なども考慮し、添加物以外の原材料は分類名 (肉類、魚介類、野菜類、等)で表示しても良いことになっています。つまり、○○類とまとめて記載された原材料を別々に見た場合、表示の順番が他の原材料よりも後ろになる場合もある事に注意が必要です。
また、このように分類名で表示されている場合、犬にとって食物アレルギーの原因となる原材料が含まれている可能性もありますので、何の原材料が使われているのか、メーカーに確認すると良いでしょう。
ペットフードの原材料でよく見かける〇〇ミール。ミールは、「レンダリングミートミール」であることが一般的です。
レンダリングミートミールとは、人間の食品に使われなかった骨周辺のお肉や、脂身、皮、筋、腺などを集め、高温・高圧下でその脂肪分を取り除き、残渣(ざんさ)を乾燥させて粉状にした、いわゆる「肉粉」・「魚粉」と呼ばれる素材です。
この素材を使うメリットとしては、タンパク質含有比率が高く、栄養成分値にムラの少ないフードを比較的安価で安定的に製造できることです。一方のデメリットは、もともと動物性脂肪の抽出を目的に工程が進むため、残渣の品質にはあまりこだわられない場合も多い事です。高温の熱が使われ、さらに乾燥工程も加わり、生肉に比べタンパク質変性はかなり進んでいると思われます。
ペットフードに使用される「ミール」は、愛がん動物用飼料の安全性の確保に関する法律(ペットフード安全法)で原材料の調達方法などについて一定の基準が設けられています。
公正競争規約では、原材料の表示の後ろに、使用した*加工助剤以外の添加物の名称、また一部においては用途名を記載するというルールが設けられています。(*加工助剤…ペットフードの製造過程で除去されるもの、ペットフードに含まれる成分と同じ成分に変えられるもの、その成分による影響を及ぼさないぐらい微量になるもの)
そもそも、なぜ添加物が使用されるの?
添加物って身体に悪そうなイメージだけど…?
私たち人間の食品と同じように、ドッグフードの「品質を保持」するためにも添加物が使用されることあります。また、それ以外の目的として、「美しく・美味しくする」ための添加物=着色料、発色剤、増粘安定剤などがあります。なお、これらの添加物に比べてあまり知られていないのは、「栄養バランスの調整」のために使用されるビタミン類やミネラル類も添加物に分類されるということです。
これらの添加物は、「栄養添加物」という総称で呼ばれます。
ドッグフードの総合栄養食において、お肉、お魚、野菜など主要な原材料のみで犬に必要な栄養基準を過不足なくクリアすることは困難なため、栄養添加物は犬の健康を支えるためには非常に大切な添加物と言えます。
このことから、「添加物=悪」と一概に言えるわけではなく、逆に、犬の健康維持のために欠かせない原材料ですらあることがわかりますね。ただし、品質保持のための添加物や美しく・美味しくするための添加物においては、少し注意が必要です。
「品質を保持」するための酸化防止剤は、犬の嘔吐や下痢の原因となる油の酸化を防ぎます。合成酸化防止剤である「BHA」「BHT」「エトキシキン」や、自然由来の「ローズマリー抽出物」「ミックストコフェロール」があります。
合成酸化防止剤の中には、過剰摂取による発がん性が疑われるものもありますが、上記に挙げた合成酸化防止剤は、ペットフード安全法によってペットの安全が確認されている含有量が定められています。その規定に従って製造されたドッグフードであれば危険性はないと言えますが、ローズマリー抽出物やミックストコフェロールなど自然由来の栄養成分のみを使用したドッグフードを選ぶのが安心かもしれませんね。
公正競争規約では、5大栄養素と呼ばれる「タンパク質」「脂質」「粗繊維」「灰分」「水分」の含有量の表示ルールが定められています。
また、メーカーによっては、5大栄養素に加えてビタミンやミネラル値などほかの栄養素の値も公開しているドッグフードも存在します。
ここからは、5大栄養素のそれぞれの役割についてご紹介します。
①タンパク質
タンパク質は犬の体の構成要素であり、成長、発達、体組織の修復、消化酵素、免疫系のすべてにかかわっている大変重要な栄養素です。タンパク質を構成しているアミノ酸は20種類あり、「必須アミノ酸」と「非必須アミノ酸」の2種類に分けられます。必須アミノ酸は体内で作ることができないアミノ酸で、非必須アミノ酸は体内で作ることができる成分です。
犬にとって必要な必須アミノ酸は10種類あり、これは食事から摂取する必要があります。この必須アミノ酸がバランスよく食事に含まれていることがとても重要で、必須アミノ酸がバランスよく含まれている食品を「アミノ酸スコア」の高い食品と呼びます。
タンパク質がどのくらい必要なのかについては「ペットフードにはどのくらいのタンパク質が必要?」にまとめていますので、参考にしてみてください。
②脂質
脂質は、タンパク質や炭水化物に比べて2倍以上のカロリーを供給するエネルギー源であるほか、脂溶性ビタミン(A、D、E、K)の吸収を助け、皮膚や被毛の健康を促進し、細胞膜や血液、神経組織や筋肉の成分となるといった大切な働きを担っています。
さらに脂質は、犬の健康面だけでなく、食べ物の味や香りを良くするという役割も担っています。一般的に、食品の味・香り・食感といった嗜好性は、脂質の量や質に影響されるからです。
脂質は、脂肪酸と呼ばれる成分で構成されており、脂肪酸の中には、犬自らの体内で合成することができない、または体内合成だけでは足りないものを食事から摂取する必要があるものがあり、これらは必須脂肪酸と呼ばれます。犬の必須脂肪酸には、リノール酸、α-リノレン酸、DHA、EPAなどがあります。
脂質については「ドッグフードやキャットフードに含まれる「脂質」について解説」に詳しくまとめていますので、参考にしてみてください。
③粗繊維
粗繊維は「炭水化物」に含まれる食物繊維の一種で、水に溶けない不溶性食物繊維を指します。水分を保持して膨らみ、腸を刺激するほか、便を増やして、便の形を良くすることでスムーズな排便をサポートしてくれます。
④灰分
灰分とは主にミネラルのことを指し、ミネラルにはカルシウム、鉄、ナトリウム、マグネシウム、リン、カリウムなどがあります。
骨や歯の構成、筋肉の収縮や弛緩、神経の情報伝達など、犬が生きる上で必要不可欠な栄養素です。ただし、あるミネラルを多く与えてしまうと他のミネラルの働きを阻害してしまうことがありますので、ミネラルの摂取にはバランスが重要です。
ミネラル値の表示は義務づけられてはいないものの、メーカーによっては値を公開している場合もあります。気になる場合は、メーカーのホームページを確認するか、直接メーカーに問い合わせてみましょう。
⑤水分
犬をはじめあらゆる生命体にとって必要不可欠なもので、体の水分が約20%失われただけで死亡する、と言われるほどです。
水分は、体内での種々の代謝や複雑な化学反応を可能にしたり、体温の調節をサポートしたり、老廃物を運搬したり、排せつ機能に関わったりと、体内においてあらゆる重要な役割を担っています。
成分分析値
成分分析値とは、あるロットの栄養成分を分析した結果のことです。
ここで注意したいのが、成分分析値には「現物ベース」と「乾物ベース」2種類の表記があるという事です。「現物ベース」はドッグフードそのままを分析した値、「乾物ベース」は、水分をすべて取り除いた状態のドッグフードを想定した計算値です。
つまり、複数のドッグフードの成分を比較する際、一方が「現物ベース」、もう一方は「乾物ベース」で栄養成分を表記していた場合、必ずしも正確な比較にはならない、という事になります。
あるドライフードとウェットフードを比較する場合、どちらも「現物ベース」で表示されていると、ウェットフードのほうが水分が多いことから一見ドライフードに比べて栄養が低いように見えます。
しかし、仮にどちらも水分を取り除いた「乾物ベース」で比較した場合、実際にはウェットフードのほうがドライフードよりも栄養価が高かった!ということが起きてしまいます。
複数のドッグフードの成分を比較する場合は、「乾物ベース」同士の数値を比較すると良いでしょう。
保証分析値
保証分析値は、「〇〇%以上」「〇〇%以下」と表示されます。
たんぱく質と脂質は、犬の健康維持のためにある一定量以上必要とされるため「〇〇%以上」と表示されます。
一方、繊維、灰分、水分は、多く含まれ過ぎると栄養低下につながる恐れがあるため、「〇〇%以下」と表示されます。
保証分析値を見る際に注意したいのは、あくまで「〇〇%以上/以下であることを保証する」という意味であって、表示されている栄養成分値がぴったり含有されているわけではありません。
ドッグフードのパッケージやメーカーのウェブサイトには「〇〇kgの子なら〇〇g/日」というように、給与量の目安が記載されていることがあります。
この情報は、犬にどのぐらいの量を与えれば良いか迷う飼い主さんには便利な一方、「あくまで数字だけを用いた計算上の目安」であることを知っておく必要があります。
あなたの身の回りに、ジャンクフードばかり食べているのに太らない人、運動もたくさんして栄養バランスの整った食事を摂っているのに痩せにくい人、冬になると太りがち…と言う人、昔に比べて太りやすくなった…と言う人、などなど、思い浮かびませんか?
このような差には、個人の体質や代謝の違いなどが影響していますが、犬にも当然同じような個体差があります。
さらに、季節、年齢、運動量、住んでいる環境などは、犬一頭一頭によって異なりますから、給与量目安に記載された量がすべての犬にとって最適であるとは決して言えないのです。
ですから、給与量目安はあくまで最初の給与量のベースとして、犬の体調や体型・体重の変化、ウンチの様子などをよく観察しながら微調整してあげましょう。
犬の適正体重については「犬が肥満になる原因と適正体重は?ダイエット方法と合わせて紹介」にて解説していますので、参考にしてみてください。
給与量目安の他に、ドッグフードのパッケージによく見かける表示として「AAFCO基準適合」という一文があります。AAFCO=Association of American Feed Control Officials (米国飼料検査官協会)の略で、ペットフードの栄養に関する基準やラベルの表示規定を定めている政府機関です。
日本においては、このAAFCOが定める栄養基準を分析試験もしくは給与試験によってクリアしたペットフードだけが、「ペットにとって必要な栄養(水を除く)をすべて含むペットフード」という意味の「総合栄養食」と表示することが許されており、そのようなドッグフードに「AAFCO基準適合」と記載されることがあります。
ここで気を付けたいのが、AAFCO基準はあくまで「必要最低限の基準」であり、品質の善し悪しを定める基準ではないという事です。
ドッグフードの品質にこだわりたい場合は、やはり使用されている原材料に着目するのが良いでしょう。
AAFCO基準適合した総合栄養食について詳しく知りたい方は「犬や猫の主食になる「総合栄養食」とは?選び方や注意すべきポイントなどを解説」を参照してみてください。
今回は、ドッグフード選びの参考となる「ドッグフードの表示」についてご紹介しました。
犬は、毎日食べるごはんを自分で選べません。大切な家族の命や健康を守るために、そして、飼い主さん自身の安心に繋がるように、ドッグフードの表示を正しく読むための参考にしてみてくださいね。
さらにドッグフードの上手な選び方を知りたい方は「ドッグフードの上手な選び方」を参考にしてみてください。
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