麻布大学 獣医学部 獣医学科卒業。東京都内の動物病院で臨床医として勤務。
その後、獣医師として栄養学をより深く学ぶことで、犬猫の健康を臨床医時代とは違う視点からもサポートできるのではと考え現在に至る。毎日欠かさず動物関係のSNSをみることで日々癒されている。
2024/07/26
目の周りの毛が涙によって変色してしまう涙やけ。毛の色によっては目立ってしまうことも多いため、気になる人もいるのではないでしょうか。この記事ではそんな涙やけについて、原因や対策を解説していきます。
犬の涙やけは、涙の排泄経路の異常やまつ毛の生え方の異常など、様々な要因によって涙が目から溢れ出してしまうことで起こります。涙が過剰に分泌され、目の周りが常に涙で濡れた状態になると、最近やカビが繁殖するもとになったり、涙の成分により被毛の色が変わってしまったりします。また、涙やけにより皮膚に炎症が起きてしまい、痒みを伴うこともあります。
まつ毛や被毛が目に入ってしまうことで刺激となり、涙やけを引き起こすことがあります。特に、まつ毛の生える部分や生える方向が乱れてしまう疾患のある犬や、長毛種の犬ではまつ毛や被毛が涙やけの原因となることが多いため、刺激となる被毛は定期的にカットするようにしましょう。生え方が異常なまつ毛を抜くことは目の近くで行う繊細な処置になります。また、まつ毛などの外部からの刺激により、目をひっかいて角膜が傷ついていることもあるので、動物病院で一度診てもらうことをおすすめします。
花粉やハウスダスト、食事などによるアレルギーでも目に炎症が起き、涙やけに繋がることもあります。
目頭の瞼が内側に巻き込まれてしまう疾患もありますが、これにより被毛が角膜に触れ続けることで刺激となります。
涙の排泄経路にトラブルを抱えている場合にも、涙やけが起こります。目と鼻をつないでいる鼻涙管が狭かったり、感染症やアレルギーで詰まったりしてしまうと涙が鼻から抜けられず、目から溢れ出してしまいます。鼻涙管だけでなく涙嚢や涙小管など、他の排泄経路にトラブルがある場合にも同様の症状が発生します。
結膜炎や角膜炎、緑内障やドライアイなど、眼球に起きている疾患によって涙やけになる可能性もあります。眼球自体のトラブルにより、痛みや痒みなど違和感があると目をこすりつける仕草がみられたり、涙や目やにが増えたり、白目が充血したりします。また目をこすりつけてしまうことで、眼球が傷ついてしまうことにも繋がります。
瞼にはマイボーム腺という器官があります。通常はここから油分を出すことで目の表面に涙を保持することができますが、この機能が何らかの原因により正常に働かなくなると、涙が溢れ出してしまいます。
パグやシーズー、フレンチブルドッグなど、目が突出している短頭種や、チワワやポメラニアン、マルチーズなど、目の大きな犬で起こりやすいです。また、柴犬などアレルギーの起こりやすい犬種も注意が必要です。特に白い被毛の犬では涙やけが目立つことが多いので気づきやすいですが、短毛種や被毛の色が濃い犬では気づきにくいため注意してあげましょう。
基本的には涙やけを引き起こすそれぞれの原因を取り除いてあげることになります。
涙によって変色してしまった被毛の色を元に戻すことはできません。疾患などにより涙やけが起こっている場合は予防が難しいですが、涙をこまめに拭いてあげることで被毛の変色や雑菌の繁殖をある程度防ぐことは可能です。
目の周りを拭く際には、眼球を傷つけてしまわないよう細心の注意をはらうようにしましょう。強い力で拭いてしまうと皮膚炎を起こしてしまう可能性もあるため、優しく拭き、目の周りが湿っている状態が続かないようにした方が良いでしょう。
ただし、根本的な原因を取り除かない限りは一時的な対処法になってしまいます。場合によっては各種疾患に対する治療が必要となりますので、動物病院で一度相談しましょう。
動物病院でも原因がわからず涙やけが改善しない場合に、食事を変えてみることで改善するケースもあります。これはアレルギーや腸内環境などが関係しているといわれています。
アレルギーとは体内の免疫機構がタンパク質に対して異常に反応することで起こります。この場合は、目の周りだけでなく身体の他の場所でも痒みや炎症・脱毛がみられることが多いです。
また、犬の体質に合わない食事や水分不足・運動不足などが続き、代謝や腸内環境が悪化することで老廃物が溜まりやすい状態になります。この老廃物によって涙の通り道が詰まり、涙が溢れることで涙やけになることもあります。
穀物中心の食事や過剰な添加物を使用した食事だと消化に良くないこともあるため、肉や魚など犬の消化しやすい良質なものをメインに使用している食事がおすすめです。
また、食事に含まれるプロバイオティクスやプレバイオティクスによって腸内環境が整い、涙やけが改善したことを示唆する研究もあります。
他にも意外なところで食事は涙やけと関係しています。
犬にも人と同じく常在菌が存在していますが、アレルギー治療でステロイドを使用している場合や糖尿病・ストレスのある場合などで免疫力が低下したり、様々な要因により皮膚のバリア機能が低下したりすることでこの常在菌が過剰増殖することがあります。
常在菌のひとつのカンジダはカビですが、これが過剰増殖する原因は免疫力の低下やアルカリ環境です。通常涙はアルカリ性ですので、涙が溢れることでカンジダが好む湿潤環境も相まって過剰繁殖が起こることでより涙やけの症状は悪化します。
また、ストルバイト尿石症では、尿の㏗がアルカリ性に傾くとできやすくなるため、アルカリ性から酸性に傾くような食事に変更し、尿石を溶解する治療があります。このように、他疾患のために食べていたフードやサプリメントにより涙の㏗が酸性に傾くとカンジダが増えることができず、涙やけの症状が副次的に改善することもあります。
このように、思わぬところが涙やけに関係していることもありますので、犬の体質に合った食事を模索してみることも涙やけ対策の選択肢のひとつです。
涙やけの原因は食事内容から目の疾患まで様々です。ただの涙やけだと思っていたら実は重大な目の疾患が原因だった、ということもありますので、症状が気になる時には早めに動物病院を受診しましょう。
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