ペットキュリアン社の栄養学責任者であるジェニファー博士は、カナダ州立サスカチュワン大学を卒業し、コンパニオンアニマル栄養学の分野で博士号を取得しています。サスカチュワン大学は1907年の創立以来、理学や医学、生物学、地質学などの理科系分野を得意としてカナダ屈指の研究施設を保有する大学であり、ペットの栄養分野で博士号を取得することは大変な難関です。ジェニファー博士は常に最新の栄養学にアンテナを張っており、ペットキュリアン製品のレシピに反映しています。
2021/03/18 更新日:2022/12/12
食用の豆類の1種であるエンドウ豆は世界で最も古い作物の1つであり、カナダやアメリカでも多く栽培され栄養豊富で健康維持に役立ち、環境に優しい食料として多くの消費者に受け入れられています。
エンドウ豆の仲間には、レンズ豆、ひよこ豆、大豆などが含まれ、そうしたマメ科の植物は、栽培の過程で大気中の窒素を土壌に還元する働きがある(窒素固定)ため、持続可能な農業には欠かせない作物としても活用されています。
しかし、こうした豆類を犬や猫に与えても大丈夫なのでしょうか?
この記事ではなぜドッグフードやキャットフードに豆類が使われているのか、その理由について詳しく解説します。理解が深まり、次にフードを選ぶときの参考にしていただければ幸いです。
エンドウ豆は、重要な栄養素が豊富に含まれる環境に優しい食材
エンドウ豆は、グレインフリーのレシピや最新の栄養学を反映したプレミアムペットフードにふさわしい食材
エンドウ豆がペットフードによく利用される理由の1つは、グレインフリー(穀物不使用)のフードの人気が高まり需要が増えているからです。
グレインフリーかそうでないかにかかわらず、犬や猫のドライフードでは、炭水化物、脂肪、タンパク質の栄養バランスが整っていることが重要です。特に炭水化物は、さまざまな栄養価のペットフードのレシピ作りに柔軟に対応できる大切なエネルギー源となります。また、炭水化物の含有量を調整することでキブル(粒)の形状、質感、硬さをコントロールすることができます。
グレインフリーのフードとはいえ、通常は、何種類かの「穀物由来ではない」炭水化物源を含んでいます。つまり、穀物を含まないこと=炭水化物を含まないこと、ではありません。
グレインフリーのフードには「穀物由来ではない炭水化物源」として、豆類(エンドウ豆、大豆、ひよこ豆、レンズ豆)、タピオカ、ジャガイモ、サツマイモなどの食材が使われています。
グレインフリーのドッグフードについては「グレインフリー・グルテンフリーのドッグフードってどう違うの?」に、グレインフリーのキャットフードについては「グレインフリーのキャットフードは猫にとって何がよいの?に」詳しくまとめていますので、参考にしてみてください。
エンドウ豆は、炭水化物、繊維、タンパク質、および多くの必須ビタミンとミネラルの供給源となります。
特にタンパク質源として、犬と猫が必要とする必須アミノ酸のほとんどを含んでいます。また、健康的な消化をサポートする不溶性繊維、可溶性繊維、難消化性デンプンも含まれています。さらに、抗酸化作用を期待できる化合物も含まれており、ガンなどのさまざまな病気に対し良い影響がある可能性が示唆されています。
一部の研究によると、エンドウ豆を含むフードが犬と猫の消化率や血糖値の変動に良い影響を与える可能性があることも示されています ※1,2。また、炭水化物の供給源としてエンドウ豆を使用したフードは、肥満犬のインスリンレベルを低下させる研究結果も発表されています ※3。
エンドウ豆には、栄養素としての分類はされていないものの、ヒトや動物に生理学的な影響を与えると考えられている多くの物質が含まれています。
その一つが植物性のエストロゲン(ホルモンの一種)です。
植物性のエストロゲンは、動物性のエストロゲンと構造的に類似している天然の化合物です。ヒトの研究では、肥満、糖尿病、骨粗しょう症、心血管疾患、神経変性および免疫障害、加齢、ガンなどのさまざまな症状に関連があると言われており、食事からエストロゲンを摂取することにより健康の維持に良い影響がある可能性が示唆されています。
一方、一部の犬のブリーダーは、エンドウ豆の植物性エストロゲンが親犬の繁殖力を低下させるのではないかと懸念しています。しかし、エンドウ豆のエストロゲン含有量は中程度であり、大豆に含まれるイソフラボンのようなレベルではないため※4、このようなリスクは非常に少ないと考えられます。
ペットフードにエンドウ豆を配合する際に議論となっている懸念材料として、レクチンという成分が含まれている事実があります。
レクチンは嘔吐や吐き気を引き起こす可能性があるとされる化合物の一種です。確かに、これまでの研究で、大量の生の豆や種子類、小麦粉を摂取した場合、成長障害や下痢、胃の膨満、嘔吐、および赤血球凝固を引き起こす可能性があることが示されています ※5。
このような症状を引き起こす化合物は、植物が進化の過程で、自分たちをエサとして食べる捕食者から身を守るために獲得したものと考えられています ※5。
しかしながら、レクチンは、多種多様な作物に一般的に見られる炭水化物と結合したタンパク質物質であり、豆類特有の成分ではありません。また、ペットのドライフードやウェットフードを作る際には熱処理(加熱)の行程があり、この工程でレクチンの反栄養的な特性は不活性化されることが分かっています ※5。
実のところ、適切に処理されたレクチンは、むしろ疾病の予防または治療に有益な効果をもたらす可能性も示唆されています ※5。ヒトでの研究では、豆類からの得た加熱処理済みのレクチンが肥満を制御するための有益な特性を持っているのではないかと報告されており、さらに、抗ガン作用や免疫機能のサポートにも効果があるのではないかという予備調査も発表されています ※5。
また、豆類に含まれるフィチン酸やシュウ酸も議論になることがあります。
豆類はペットフードのミネラル源として有用という考え方がありますが、成分的にフィチン酸やシュウ酸も含まれるため、ミネラル類の体内への吸収率は他の食品よりも低いと考えられています ※6。
フィチン酸は植物にとって大変重要な栄養素であるリンの貯蔵形態として存在しています。さらに、亜鉛、カルシウム、鉄などの金属イオンと強く結合する性質を持っており、リンをはじめとするこれらのミネラルを次世代に渡す役割を果たしているとされています ※6。つまり、フィチン酸そのものは植物にとって必要不可欠であり動物にとっても特に有害な化合物ではありません。しかし、その結合力の高さゆえに食事として摂取した際にミネラル類の消化率を下げる可能性があるのです。
シュウ酸も同じく、ミネラルの吸収率を低下させると言われます ※6。このような性質をもつ成分を持っていることから懸念材料として議論されることがあります。
一方で、豆類のフィチン酸とシュウ酸の含有量は、熱処理(加熱)を行うことである程度減少して影響が薄くなることが分かっています。また、影響が薄くなった場合も、豆類に含まれるリンの吸収は緩やかでありペットフードに含まれる総リン量のごく一部にしか影響しないため、豆類を配合することで、アミノ酸や炭水化物という栄養バランスを整えながらペットフード全体のリンのレベルを細かくコントロールできる側面もあります。
・エンドウ豆は、ペットフードの製造拠点(地元カナダ)に高品質な作物を収穫できる農場があるうえに、重要な栄養素が豊富に含まれる環境に優しい食材です。ですので、グレインフリーのレシピや最新の栄養学を反映したプレミアムペットフードにふさわしいと言えるでしょう。
・エンドウ豆には、ビタミンやミネラル、タンパク質、不溶性および可溶性繊維、難消化性デンプン、抗酸化物質など、健康をサポートするさまざまな化合物が含まれています。
・心配な側面として議論されるレクチンは、フードを製造する際の熱処理によって不活化されるため、ドライフードや缶詰ではほとんど影響を及ぼしません。
・エンドウ豆は植物性エストロゲンを含んでいますが、その含有量は、他の一般的な食材の含有量と同等で特に問題視するレベルではありません。
ペットフードに豆が入っているワケについて理解が深まり、次にフードを選ぶときの参考になれば幸いです!
※1.Carciofi AC, Takakura FS, de-Oliveira LD, et al. Effects of six carbohydrate sources on dog diet digestibility and post-prandial glucose and insulin response. J. Anim. Physiol. Anim. Nutr. (Berl). 2008;92(3):326-336.
※2. de-Oliveira LD, Carciofi AC, Oliveira MC, et al. Effects of six carbohydrate sources on diet digestibility and postprandial glucose and insulin responses in cats. J. Anim. Sci. 2008;86(9):2237-2246.
※3. Adolphe JL, Drew MD, Silver TI, Fouhse J, Childs H, Weber LP. Effect of an extruded pea or rice diet on postprandial insulin and cardiovascular responses in dogs. J. Anim. Physiol. Anim. Nutr. (Berl). 2014.
※4.Bhagwat S, Haytowitz DB, Holden JM. USDA Database for the Isoflavone Content of Selected Foods. Beltsville, MD: U.S. Department of Agriculture;2008.
※5. Roy F, Boye JI, Simpson BK. Bioactive proteins and peptides in pulse crops: Pea, chickpea and lentil. Food Research International. 2010;43(2):432-442.
※6.Champ MM. Non-nutrient bioactive substances of pulses. Br. J. Nutr. 2002;88 Suppl 3:S307-319.
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