犬猫専門の動物園でアルバイトした事をきっかけにペット業界へ。以降、ペットショップ、ペット専門問屋、店舗開発などペットに関わる仕事を経験後、現在はNOW FRESHの営業として日々活動中。
2020/06/30 ※2022/09/14更新
「ストルバイト結石」ということばを聞いたことはありますか?
ストルバイト結石(ストラバイト結石)とは、尿路に形成される石のような物体を表し、猫と飼い主さんの両者にとって避けたい病気の一つである「尿路結石症(尿石症)」を引き起こす結石です。
猫の尿路に結石が形成されてしまうと、ひどい痛みでほとんど排尿できなくなってしまう場合があります。さらに、一度尿路結石症(尿石症)を患うとその後も繰り返し発症してしまう可能性が高い疾患です。
「ストルバイト結石は聞いたことがあるけど、あまり知らないな…」
「ストルバイト結石を日ごろから予防できたら、もっと安心して猫と楽しい時間を過ごせるのに…」
そう思っている飼い主さんに、ストルバイト結石について、対処法と合わせて詳しく説明します。ストルバイト結石を正しく理解し、安心して猫と過ごすために参考にしていただきたい内容です。
猫は下部尿路の病気にかかりやすい動物です。
病気が原因でトイレに間に合わなかったり、排泄時の痛みでトイレに行くのを嫌がったりすることもあります。そうした際はまず下部尿路の病気を疑ってみてください。
このような下部尿路の病気や症状は、F.L.U.T.D.(猫の下部尿路疾患)と呼ばれています。 “Feline Lower Urinary Tract Disease”の略称で、下部尿路を示す膀胱から尿道に起こるさまざまな病気や症状の総称です。膀胱炎・尿路結石症(尿石症)・血尿・尿道閉塞などが含まれ、「おしっこトラブル」とも呼ばれます。
その一つである尿路結石症(尿石症)とは、腎臓や尿管、膀胱、尿道を総称した尿路に結石ができる病気です。結石が尿路に作られることにより、猫に様々な症状を引き起こすため、猫にとって危険な病気と言われています。
砂状の結晶や結石の場合は尿と一緒に排出されますが、重度の尿路結石症(尿石症)を発症すると、結石が尿道に詰まる尿道閉塞や、排尿困難から腎機能の低下を引き起こし、尿毒症などを誘発する場合があります。
尿路結石症(尿石症)を引き起こす代表的な結石は、「ストルバイト結石」と「シュウ酸カルシウム結石」の2種類で、ストルバイト結石は1歳から6歳の成猫期、シュウ酸カルシウム結石は7歳から11歳のシニア期の猫に発生しやすいことが明らかになっています。
尿路結石症(尿石症)を患っている猫は、「いつもと違う尿の色」や「キラキラ光る尿」、「頻繫にトイレに行く」「排尿もせずトイレの中に長時間いる」「トイレでじっとして動かない」「排尿時に鳴く」などの症状が見られます。
特に、結石が腎臓や膀胱を傷つけている場合や、結石が尿道に詰まってしまった場合、猫にひどい痛みを与えます。猫が痛くて排尿できない、あるいは排尿に違和感を感じている様子があったら、尿路結石症(尿石症)の可能性を考えましょう。
時間をかけて猫の体に蓄積する尿路結石は少しずつ猫の体調に変化をもたらします。猫が可愛そうなくらいの激しい痛みを抱えてしまう前に、体調の変化にはできるだけ敏感に気づいてあげることが大切です。
尿路結石症(尿石症)を引き起こすストルバイト結石を形成するはっきりとした原因は明らかになっていませんが、ストルバイトの結石化を促す可能性のある原因として次のことがわかっています。
ストルバイト結石は、アルカリ性と酸性で表される尿の性質「pH」がアルカリ性に傾くと発生しやすいと言われています。猫の健康的なpHの値は6.5前後とやや酸性ですが、このpHの値は1日の中でも食事の前後や活動量によって変動します。
例えば、満腹時や消化の最中は体内の酸が消化に集中するため尿のpHの値はアルカリ性になり、運動をすると乳酸によって尿のpHの値は酸性に向かうといった具合にpHの値に変化が起きます。
尿のpHがアルカリ性に傾く主な要因としては、上記の下部尿路の炎症のほかに、ストルバイト結石の構成要素である「リンとマグネシウムの過剰摂取」「一度に大量の食事を与えること」「消化の悪い食事を与えること」「運動不足」「太りすぎ」など生活習慣による影響も考えられています。
ストルバイト結石は膀胱などの下部尿路にできた炎症によっても発生します。下部尿路の炎症によって尿中の菌が増え、菌が尿素をアンモニアへと変換することで、ストルバイト結石が形成されやすい尿環境へと転じてしまうのです。また、長時間排尿しないことや、ストレスによる免疫低下などにより、もともと膀胱や尿道にあった菌が増えることも下部尿路の炎症を引き起こします。
水分摂取量が不足すると、排尿の回数が減って尿が長時間尿路に留まり、尿路内の菌が増殖するため、結石が発生しやすくなります。さらに、水分摂取量の不足によって尿が濃くなり、結石化しやすい尿環境を作ってしまいます。
水分不足に陥る要因の一つは、猫が進化してきた背景にあります。猫はもともと砂漠地帯で進化し、必要な水分を獲物によって得ながら水分の少ない環境を生き抜いてきた動物なので、積極的に水を飲むタイプではありません。
またドライフードを日常的に与えていることも水分不足に陥る要因です。前述のように猫はたくさんの水を飲まないため、食べ物から水分を摂取する必要があります。しかし、ペットフードの中でも水分含有量の最も少ないドライフードを毎日食べていると水分不足の状態を加速させてしまう可能性があります。
猫のストルバイト結石の原因には諸説ありますが、前述したような原因以外にも、環境変化によるストレスや運動不足なども原因となり得ることがわかっています。そこで、毎日の生活に取り入れやすい対処法を6つ紹介します。
水分が含まれるウェットフードを与えると、確実に水分摂取量を増やすことができます。また、ウェットフードは一般的にドライフードに比べて肉類の含有量が高いため尿の酸性化を助けてくれる可能性があります。お気に入りのウェットフードを見つけて与える機会を増やしてみましょう。
猫が美味しく水分を摂取するために、スープやミルクなどを与えてみることもおすすめです。
水分摂取量を増やすことは、尿路結石症(尿石症)の発生を防ぐことにつながります。下部尿路のトラブル悩んでいる子は、ぜひウェットフードを取り入れてみましょう!
ウェットフードに関する詳細は「犬や猫にウェットフードはなぜ良いの?健康面のメリットや食生活に変化を与えるその理由を解説」の記事にまとめていますので合わせてご覧ください。
常に清潔で新鮮な水と、水を入れるお皿を複数用意し、水分補給の環境を整えてあげることが大切です。
猫の中にはフードが濡れることを嫌う子や食事場所と水場を分けたい子がいますので、フードボウルの横だけに水を設置することはおすすめしません。できれば、猫が頻繁に出入りする各部屋に1か所の水飲み場をつくってあげましょう。
多頭飼いの場合は、立場の弱い子が水を飲みにくくなっている場合があります。弱い子が気に入っている休憩場所の近くに、その子用の水飲み場を設置してあげるなど、工夫してみてください。
最近の研究では、尿路結石の主な原因が環境ストレスであることを示唆しています。毎日の習慣は猫の心の安定につながっているので、猫にストレスをかけすぎないように毎日の習慣を変更する際は最小限にしましょう。
猫がゆっくりと静かに排尿できる環境を整えたり、安全を感じられる場所にトイレを用意したりするなど、猫が排尿時に感じるストレスを軽減してあげることが大切です。
適度な運動は排尿頻度を増やし、アルカリ性の尿を防ぐことができます。一緒に遊ぶ時間を増やし、意識的に運動させましょう。
猫の肥満のリスクやダイエット方法については、「【獣医師監修】猫の肥満は危険!?知っておきたいリスクとダイエット方法」に詳しく紹介していますので、参考にしてみてください。
ストルバイト尿石症を発症してしまった場合は、獣医師の診断を受けて適切な療法食を選択することが大事です。ただ、尿pHの酸性化ばかりに気を取られると、今度は別の尿石症(例えばシュウ酸カルシウム尿石症など)のリスクが高まる場合もあります。
日ごろから猫に必要なアミノ酸バランスやミネラルバランスに配慮された高品質の食事を与えて体調をコントロールしていきましょう。
特にクランベリーは、天然のポリフェノールとプロアントシアニンも含んでおり、「尿路結石症(尿石症)」を引き起こす尿路感染症などの予防する効果が期待できます。
クランベリーを猫に与えるメリットについては「クランベリーが猫のオシッコトラブルを予防するって本当?その理由について」に詳しくまとめていますので、参考にしてみてください。
以上、6つの対処法を紹介しました。すべての方法を一気に取り入れることは難しくても、猫の性格や健康状態に合ったやり方で、できそうなところから気軽に取り入れてみてくださいね。また、ストルバイト結石のはっきりとした原因は明らかにされていないため、猫の食事を選ぶ際は獣医師へ相談することもおすすめします。
今回は、猫のストルバイト結石について説明しました。ストルバイト結石などによる尿路結石症(尿石症)は、一度患うと再発してしまう可能性が高い疾患です。
この疾患の原因には遺伝的な側面もあり、注意していても発症してしまう子がいるのも事実です。
その子の体質が原因である場合、コントロールするのはなかなか難しい面もありますが、日頃の生活の中で尿路結石症(尿石症)のリスクを下げられるよう、そして、飼い主さんが安心して猫との時間を楽しめるよう、今回ご紹介したような対処法を無理なく毎日の生活に取り入れてみてくださいね。
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